とある女性航海士の日常

新米の女性航海士です。高専や船のことなど書きます。コメントは悪意のないものは100%返信しますが乗船のため非常に遅いです笑(半年後くらいかも)

【元実習生が教えます!日本丸紹介】練習船日本丸の中はどうなっているの?

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私が撮影した日本丸
私たち船乗りの卵は免許を取るために学校を離れて船上で乗船実習をしなければなりません。
 
その期間、実に2年次に1か月、4年次に5か月、6年次に6か月の合計1年間にも上ります。まったく、やってらんないですね…(笑)
 
私は最初の1か月でももう苦痛でしょうがなかったです。

これはそれぞれの学校の練習船で実習をするわけではなく、海技教育機構というところの持つ練習船に全国の商船学科の学生たちが集まって実習をします。
 

 

全国には私が通っているような商船学科が全部で5つあるのですが、彼らが集まって実習をするんですね。

海技教育機構日本丸海王丸、銀河丸、などの練習船を持っています。

海技教育機構、かつては航海訓練所と呼ばれていたらしいです。私たちのような、船乗りの卵を実習で育成するんです。私は昔の名前の方がわかりやすくて好きなんですけどね。

これから私が乗った練習船を紹介していきます。

日本丸に乗っていました

 
私は2年生の時に1か月と4年生の時に実習で5か月間、実習に行ってきました。

私が乗った練習船帆船日本丸です!

大きさは全長110メートルです。小さいですね。
 
プレジャーボートとか想像するのでしたら大きいかと思いますけど、その中に実習生100人と乗組員50人の150人が乗るって考えると小さい船です。

横浜の日本丸パークにある、あれですね。見学したことある人はいるんじゃないでしょうか?
あっちは一代目ですが、私たちが乗ったのは二代目でした。

外から見た感じはどうでしょうか。マスト立ってる船なんて今どきないしオッシャレ~なイメージじゃないでしょうか?

ですが、乗ってる側からしたら全然そんなことはありません!!

まず、日本丸は狭い!
 
その狭さについては言ってたらきりがないんでおいおい書いていきますが、あの大きさの船に100人も学生が乗るなんてストレスでしょうがないです。

船内生活はそんなだし船の実習も大変なだけだし、みんな下船日を楽しみにしているんです。
 
居室の前にホワイトボードがあるんですが、そこに「横浜下船まであと3日!」なんていう風にみんな書いてます。あんまりホワイトボードとして活用されてないんで。ほかにはまあ、落書きかなんかされてます(笑)
 
さて、日本丸の中はどうなっているのかというと…。
 
 

居室


まず、居室は4人部屋が2部屋、8人部屋が14部屋あります。
超絶、狭いです!!
 
全部屋2段ベッドで人との距離が近すぎるしプライベートスペースなんてほとんどありません。
 
部屋の奥に小さいソファーがありますが余裕あるのはそこくらいです。あとは本棚とか服の棚とかロッカーが所狭しと置かれています。しかも相部屋のストレスですよね。
 
何が悲しくて高校、大学の年齢になってまで1年間8人部屋で過ごさなきゃならないんだか…。
 
大きさとかもう、1人部屋でもこんなに小さくないだろうってくらいです。
そんな中8人部屋なら2段ベッドが4つ入っています。
 
しかも、女子部屋の隣は全然男子、です。銀河丸とかっていう汽船(帆とかマストがないやつ)はまだ男子と女子で階が分かれてるらしいんですけど、日本丸は古い船なんでそんな配慮はされません。
 
しかも汽船の方は全然帆船より広いらしく、汽船に乗ったことある人はみんな日本丸せま!ってなるそうです。
 
ただでさえ学生がうじゃうじゃいる練習船の中でも、私が乗った日本丸はとりわけひどい、ということですね(笑)
 
まあ、快適とは言い難いですね。

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日本丸船内の廊下


いい感じの写真を撮れていないか探したんですが、残念ながらみんな人が写っているとかで大して載せられる写真はありませんでした。

こんな写真しか撮っていなかったので載せておきますね。

 

ですが、海技教育機構Facebookもやっているらしいのでそちらから実習風景の写真を見られます!よかったらそちらからどうぞ!私はFacebookって何なのかよくわかっていないんですけどね…。

 
そうそう、100人くらいいた航海コースの実習生の中で、女子は20人ほどでした。意外と多いですよね?
最近は女性の船乗りも全然珍しいことではなくなり、今後もどんどん増えていくと思います。
 
 

外見とのギャップ


やっぱり練習船って乗るどころかなかなか見ることもできませんから、港とかに行くと、珍しがって人がいっぱい集まるんです。
 
みんな「きれいね~」みたいな感じで見たり、写真を撮ったりしています。
 
しかし、我々は荒波にもまれながらあの中で必死で実習をしてるんです!全然穏やかじゃありません。
うらやましいです!私も見るだけ側に行きたいです…(笑)

外から見る、おしゃれで夢やロマンがいっぱい詰まってそうな日本丸と現実はかなり違います…、夢見てた人すみません💦
もう私は憧れるどころか、つらい実習の思い出がよみがえります…。
 

あ、ちなみに、日本丸って帆船だから帆を広げたところってきれいじゃないですか?
 
なんですが、私は一度も帆走(帆を使って風だけの力で航海すること)をしていないんですよ。日本丸にはトータルで半年間乗りましたが、すべて機走(エンジンで走ること)でした。
 
何なら、日本丸が帆を張ったところだって私は見たことありません!
 
実は、私の一個上の先輩まで帆走があったんですが、マストに登った人が落ちて亡くなるという事故があり、私たちの代から急遽、マストに登るのはやめようということになったんです。
 
帆走は大してしたくなかったけど、高いところは好きなので一度はマストに登ってみたいと思っていて、それがなくなったのは少し残念でした。
 
しかも、6年生の時にあと半年実習をしなければならないんですが、そちらはもう汽船と決まっているので私は人生でもう2度とマストには登れないんですね。帆走をしない商船学科生というのは歴史的に見ても異例です。

とはいえ、帆を張らないのに、マストを動かして疑似的に帆を張るような謎の動作はしたという…。
 
そもそも、帆走だって就職したら絶対にしないんですよ!もう今どきすべての船はエンジンで動いていますから。
 
それなのに実習では帆船というよくわからない練習船…。
海技教育機構に就職でもしない限り帆船はもう今後の航海士人生で乗らないですよ?ここに書いてもしょうがないけど、練習船と言いつつ無駄な作業が多すぎますね!
 
…と、話が全然ずれてしまったので、船内の紹介に戻りますね(笑)
 
 

教室

 
教室は2つあります。

第一教室が1番広く、ぎゅう詰めになれば100人入ります。広さは、一般的な学校の教室よりちょっと広いくらいです。
こっちは兼食堂にもなってるので学生が1番使う教室ですね。
 
第二教室は、より深い(船底に近い)ところにあります。いわば、地下みたいなイメージですね。深すぎてスカッツル(船特有の丸窓のこと)がないんです。
こっちは第一教室と同時進行で別の授業をやるときなんかに使われてますね。
あと小さいんですけど筋トレの道具もあるので自由時間に男子とかが筋トレしてたりします。
 
 
そうそう、船の中でどうやって運動してるかっていうことなんですが、一応甲板の上しか広いスペースがないのでそこでみんな自由時間に走ってますね。外からも見える、1番上の部分ですね。
 

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甲板
私もマストの周りぐるぐる走ってました。
 
木甲板、広いですけど、なにしろ下で部員さんが寝てるところは走っちゃダメとか船尾にある広いスペースは別の運動する人が使ってるからとかで走れるのは110メートルのうちほんの一部です。全く、可動域少ないんだから…。
 
ちなみに停泊しているところに来ていただいても甲板上で運動しているのは見ることができません。運動できるのは仮泊(錨をおろして沖で止まっていること)の時だけなんです。
 
船が動いている航海中はもちろん運動すると危ないという理由ですし、岸壁に接岸してるときは、一般の人に走ったりしてるところを見られると遊んでんじゃないかと思われるから!らしいですよ?(笑)

だから私たちが1番活発なのは陸から離れて周りをはばからなくていいときかもしれませんね。
 
あとはマジで風強くなったら甲板に出ること自体禁止されたりします。
 
 

レクリエーションスペース

 
それから、小さいですが図書室みたいなスペースもあります。

航海系の法律や授業で使うような本はもちろんですが、読み物なんかもあったりして、例えばハリーポッター」シリーズや、マザーグースの本、私の好きなシドニィシェルダンさんの本もあります。あと、旅行本やエッセイ、「〇〇の作り方」系の趣味の本もあったりします。
 
個人的に気になったのは「宝くじ必勝法」って本ですね(笑)
ほかにはどんな本があったか忘れましたが、とりあえず、退屈しない程度の量も種類もそろっています。
 
あと、図書スペースと一緒にカードゲームやボードゲームがあります。すごろくみたいなゲームやオセロ、将棋などがあります。
 
私の時にはオセロがブレイクしてマニアたちが高度な戦いを繰り広げていました。
 
航海は長くて退屈するのでそうやって工夫しているんですね。
 
 

トイレ・風呂

 
トイレやお風呂ももちろんあります。
 
男子はトイレと風呂が別ですが、女子は人数が少ないせいかトイレの奥に風呂がついてるタイプですね。
船では清水は貴重なのでトイレは海水で流します
 
女子の風呂には3つシャワーがあるので交代で入っています。入浴時間中に入りたい人から順に風呂に行って、混んだら次の人を部屋まで呼びに行くって形ですね。
友達と遊んだり運動したりしていて遅く入る方がいいって人もいます。
 
風呂にはちゃんと浴槽もついてます。シャワーは清水ですが湯舟は海水を入れ、そこに蒸気を入れて温かくするという仕組みです。
この海水蒸気風呂は、実はめっちゃ気持ちいいです!本当に温かいし海水なので実習で疲れた体にしみわたります。(もちろん風呂をでたらちゃんと清水のシャワーできれいにゆすぎます)
 
最初は先入観から、船の下からとってきた海水なんて嫌だ!って女子は誰も入りたがらなかったので、浴槽が使われ始めたのは航海もだいぶ後半になってからでした。
次がもしあれば風呂にはぜひ入りたいですね。
 
 

船首像

 
日本丸船首像(1番船首の、波にめっちゃぶつかるところにさらされてる、なんか祈ってる格好の女性の像のこと)、きれいですよ。
 
食堂兼教室の壁に説明書きがありまして、船首像の名前は藍青(らんじょう)ちゃんというそうです。
 
像はけっこう大きいんですけどね、金色で美人で優雅なんです。船首の周りに金の花みたいな模様がありまして、航海の時に激しい波に打たれて一部欠けてしまってました。
 
私は最初どうやって読むのかわからなくて「あいあお」かなぁとか思ってました(笑)

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船内の懸賞のようなもので日本丸のTシャツをもらっったのですが、そこにプリントされていた藍青ちゃんです。
あとはこの記事の1番初めの画像にも一応写っています。
 
ちなみに日本丸の姉妹船、海王丸の船首像は紺青(こんじょう)ちゃんといって藍青ちゃんと対になっています。
 
 

船橋


なんと、1番大事な、船を操船する船橋を書き忘れてました💦

基本的に船橋で、航海コースの学生たちは実習や当直をします。船を動かす指令をすべてここで行っています。

船橋には、他船と連絡を取り合う無線機、障害物を電波によって見つけるレーダー、海図をコンピューター画面に映した電子海図、舵をとる操舵ハンドル、など数々の専門機器があります。もちろん紙の海図もあります。
やっぱり練習船なので、こういうところは実習できる環境が整っているんですね。
 
ここで私たち実習生は交代で当直と言って、自分で船を走らせる練習をします。それについては長くなりそうなのでまた書けたらいいかなと思います。

眺めは割とよくて、遠くまで見えるし、景色もきれいです。
見張りをするから船橋は船内でも高いところにないといけないんですね。
 
私が将来乗る、会社の船はもっと大きいからもっと高いところから見えるんでしょうか。楽しみです✨まあ、実際当直をすることになったらプレッシャーでそれどころじゃないんでしょうけど…。
 
あと、機関室もありまして、実習してましたが、私は航海コースで、機関室は「なんか機械がうるさく回ってて暑いわ~」くらいの認識しかないので割愛します。(←めんどくさくなった人)
だめですよ、本当は航海士といえども自分の乗る船の機関のことは多少なりとも知っておかないといけません!(笑)
 
 
 

いかがでしたか?つたない文章で伝わりにくいところもあったと思いますが、最後までお付き合いくださりありがとうございます。まさか記事にするとは思っていなかったので、なんの資料もありませんでしたが…。今度行くことがあればもっと写真を撮りたいと思います。

まあ、もう2度と日本丸には乗りたくないっていうのが本心ですけど(笑)

機会があれば船内での実習の様子も書いて行きたいと思います。