とある女性航海士の日常

新米の女性航海士です。高専や船のことなど書きます。コメントは悪意のないものは100%返信しますが乗船のため非常に遅いです笑(半年後くらいかも)

【元実習生が語る!乗船実習の魅力】練習船のメリットを紹介します!

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以前の記事(【日本丸の元実習生が語る】乗船実習で受けた理不尽~練習船内部の実態~ - とある女性航海士の日常)で、実習で理不尽だと思ったことについて書いたので、今回は実習のメリットについて書こうと思います。


まあ、私としては、これだけメリットがあったところで、大変なものは大変って感じなんですけどね…(笑)


では以下、実習をしてみて魅力に感じたことです。

 

 

いろんな高専の人と出会える


海技教育機構練習船では、自分の高専だけでなく、全国に5つある高専の人たちがみんな集まって実習をします。そのため、自分のクラスメート以外でも、同じ船乗りを目指す仲間たちに出会うことができます。


ほかの高専では文化も違うし、風土も違うのでいろいろなおもしろい話を聞くことができます。例えば、この高専はほぼ全寮制のようだとか、あの高専は頭がいいとか、あの高専はほかではとれない資格がとれるとかですね。

また、商船学科はもともと県外から来ている人が多いので、商船学科が全部集まると、全国各地の出身者がいるんですよね。


班も部屋も、学校を混合して編成されるので、気が合う人にも出会いやすいですし、そこで会った人と友達になり、上陸のときに一緒に遊んだりします。


私も、実習で出会った他校の人と連絡先を交換し、今でも連絡を取り合っています。

 

学校は全国にあるので、実際に会えるのは本当に実習のときだけ、2年おきとかなんですが、そのつながりは深く、よくお互いに情報交換もしています。

 

こんな特殊な学科にいるのは全国でも私達くらいです。実習で出会える少人数だけなので、そんなに仲良くなくても顔見知りになります。狭い業界、ということですね。


就活先もほとんどみんな一緒なので、就活のときの情報をやりとりすることもあります。だから、実習で会った人が同僚になることもよくあります。

 

 

いろんな場所に行ける

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シンガポールにも行きました!

これは実習の醍醐味と言ってもいい部分だと思います。


乗船実習では、日本全国の港をぐるぐる周り、時には海外にも行きます。

 

だから、実習の合間に上陸し、今まで行ったことのないところを観光できます。

自分では遠すぎて行こうと思えないところも実習なら自然と観光できます。

 

私自身、神戸や函館など、よく知らなかった都市も観光できました!


特に、普段実習でつらい思いをしているだけに、知らない都市で遊べることはいいリフレッシュになるんです。下船する港は割と大きい港が多いので、便利だったり近くに観光スポットがあることが多いです。それまで行ったことのないところに行けるって、実習のいいところですよね。


また、海外にも行けます!高専の商船学科では、航海コースは4年生の、機関コースは6年生の実習で遠洋航海があるんです。私も4年生の実習でシンガポールに行きました!その記事はこちら↓↓

【日本丸旅行記】写真付き!~シンガポール編~ - とある女性航海士の日常

 

先輩はハワイに行っていましたね。実習で、勉強で行くはずなのに、海外を観光できるってすごいチャンスです!

 

 

普通ではできないことができる


これも、特殊な学科にいる私たちならではです。


例えば、申し訳ないですが、30歳を過ぎていきなり「あ、船乗りになりたいなあ」と思ってもすぐになれるものではありません。

あるいは、停泊している船を見て、「あの中どうなっているんだろう」「ちょっと入ってみたい」と思っても当然できません。

 

自衛艦などの一般公開に参加するか、高いお金を出してクルーズ船に乗るくらいしか、普通に暮らしている人が船と触れる方法がないのです。

(余談ですが、一般の人がもう少し船に触れる機会が多くなれば、船がどれだけ日本を支えているのかもう少し知ってもらえると思うんですよね。けっこう日本って外航船とか存在すら知らない方が多いと思うので)


さて、ところが、私たち商船学科生は、15〜21歳っていう年齢のうちに乗船実習をして、10代から船に乗ります。もう、高1の年齢から船に乗ることに慣れ、船に詳しくなります。船に乗るのが日常で、当たり前になってしまいます。


今となっては、船内にいることや自分が航海士を目指していることに何の違和感も感じません。

商船学科に行っていると言うと、よく「自分の回りにいなさすぎて…」とか「初めてそういう人に会った」と言われます。

それだけ普通の人からすると珍しく、身近にない感覚なのでしょう。一般的な生活と差があることは私にもわかります。

 

だからこそ、普段できない船に乗ることが普通にできること、商船学科の魅力ですよね。

 

 

お金がほぼかからない


これは、おうちの方にとっては特に重要なことじゃないかと思います。


私たち商船学科生に実習させることは、莫大なお金がかかります。

 

合計で一年分にもなる食費生活費はもちろん、船の運航も並大抵の費用ではありません。

練習船を一隻造るのに、どれだけのお金がかかるでしょう?

 

それを動かすための人件費燃料費、何年も使い続けるための維持費もありますね。実は、商船学科生にかかるお金は、医学部にも匹敵すると言われています。

 

それだけのお金を自腹で負担するとなると、一部の裕福な家庭の人しか商船学科には進めないことになります。

では、実際に学生が海技教育機構に負担する金額はどれくらいでしょうか?


答えは、一度の実習で一万円前後です。

 

これは、テキストや用具代、クリーニング代などに使われ、実習によって変わります。予め金額がJMETSから指定されるのですが、実習の最初にその分だけ回収されて終わりです。

 

ちなみに、私の半年実習(三ヶ月に縮みましたが)の経費は六千円でした。月にじゃないです。合計でです。既に前の実習でテキストとかいろいろ買ってあったので。


いかがですか?

半年でもそれくらいって、衝撃的ですよね!食費とかももちろん負担はありません。

学校の寮だって食費は月に数万円はかかりますから、下手すると、実習中の方が陸にいるときより安上がりなんじゃないでしょうか?


なぜこんなに自己負担が少なく、トータルで一年分もの食費や生活費、船の運航費などを出してもらえるのかというと、はい税金です。

 

私たち商船学科生は、日本の未来を担う学生たちなのです。

 

日本は島国なので、海外から船での輸入がないと生活できません。

車を動かす、電気を作る、食べ物など、皆さんの生活に必要なものがたくさん船で運ばれてきています。船乗りがいないと日本の産業は成り立たないと言っても過言ではないでしょう。

 

お医者さん等もそうでしょうが、「いなくても頑張れば生活していける」ような職業ではないのです。住居、電気、食料など全て自給自足で賄っている方は別ですが。

 

そんな、私たち船乗りの卵のために、国からこんなに多額のお金を出してもらえているのです。未来の船乗りを育成するための投資をしてくれているのです。まあ、ひいては、皆さんのお家の方の税金ということになるのですが、でも大変ありがたい仕組みであることに変わりはありません。


ただ、最初の乗船は東京や神戸なのでそこへ行くお金は必要です。多くの学生が地方で遠いので、実習への行き帰りはちょっと大変かもしれないですね。

私は安いので高速バスを使って行ったことがあります。北海道の人とかは飛行機で来ていて、そこの旅費でしょうか、負担と言えば。


遠洋航海に行くときにはもう少しお金がかかります。

パスポート代ビザのお金も自分で出さなければいけません。私のときはシンガポールだったのでパスポートだけでしたが、二万円くらいでした。

あと、海外で病気をしたときのための保険料が一万円程必要ですが、遠洋航海のときですらも必要なのはそれくらいでしょうか。シンガポールへ行くのに旅費や、ホテル代などはかかりません。


こうして見ても、練習船でトータルで一年間も過ごすと考えると、自己負担はないも同然と言えるでしょう。誰にでも船乗りになれるチャンスがあります。

 

それで、食事もでき、暮らせて、日本のいろんな観光地や海外にまでお金をかけずに行くことができるのですから経済的には驚く程充実しています。

 

しかも、働いているわけでもなく、教わるだけの立場ですよ?私たち学生は感謝しなくてはいけないですね。


あ、当然ですが、上陸地で過ごす費用はもちろん自腹です。観光のためのお金や交通費は自分で出します。

まあ、個人的には、横浜とか神戸とか函館とか、普段行けない観光地に実習で行けるというだけでも素晴らしいので、そこで遊ぶお金くらいは気にしないという感じですけど。

実習生の負担で一番大きいのは、お土産代かもしれませんね(笑)

 

 

集中的に船の勉強ができる


乗船実習中は、暮らすのも船の中船を動かす訓練をし、座学も全て船舶運用に関することです。

 

要は、一年に渡って実際に船に乗りながら船の勉強ができるのです。まあこれが楽しいかと言えばぶっちゃけそういう人ばかりでもないのですが、こうやって学ぶことにより、船乗りを育成していっているのです。

 

例えば、普通の学校の座学であれば、国語や数学、歴史など様々な勉強をすることでしょう。

 

実生活で使える内容ももちろんあるでしょうが、中には、「これ、将来使わないよね?」と思うこともあると思います。確かに、学校で勉強していると、将来のためではなく、テストや受験のための勉強になるようなことも多いはずです。


しかし、実習では、自分が将来就職するであろう、船について突き詰めて勉強しているので、船の生活を自分で経験することができます。これは、船乗りになるときにかなりの大きなポイントになります。

この一年間をしっかり実習するのとしないのとでは、就職して船に乗ったときに全然違いますよね。ちゃんと訓練をして、船員を養成しているのです。船乗りを目指す人には、とても有効な仕組みですね。

 

 

ご飯がおいしい

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青雲丸の洒落た食堂案内

練習船の食費は税金で賄われていますが、別に食事が質素とかそういうことはなく、ご飯は三食しっかりした量が食べられます。女子で足りないって人は全然いなかったですね。

内容も、ご飯プラス、お肉とか揚げ物とか、何種類か一度に食べられます。

 

ただ、野菜は少ないです。栄養バランスや体調に影響があるので、なるべく野菜は摂るようにし、自分でも野菜ジュースなど用意した方がいいかもしれません。


特に日本丸の食事は豪華ですね。焼き肉と刺し身が一緒に出たりとか、ラーメンとチャーハンが一緒に出たりとかしてました。

バリュエーションも豊富で、麺類とか、鶏飯が出てきたりもありましたね。日本丸ではお米を自分でよそえたので好きな量のご飯が食べられました。

 

それから、寄港した港の名物を出されることも多かったですね。

広島に入った後はカキフライとか、函館に入った後は海鮮料理とかが出ます。港で食料を調達するときにそこの特産品仕入れてるんですね。そういう決まりなのか、司厨員さんの計らいなのかはわかりませんが、出た港の料理を船でも食べられるのは嬉しいことです。


食事は実習の数少ない楽しみなので、量もしっかりあって、いろんな寄港地の食材を食べられるのはいいですよね。

 

 

 

 

いかがでしたか?こんな感じで、実習のメリットというのも多いです。

 

だから、船乗りになりたい人には商船学科は大変いい仕組みですね。実習は大変なことの方が多いくらいなんですけど、魅力にもなるべくスポットを当てられるといいですね。


実習の醍醐味をぜひ皆さんも味わってみてください!

 

 

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