【元実習生が語る!実習あるある】練習船内でよく起こること
私たち商船学科生は船乗りになるため、合計一年間、練習船で乗船実習をします。
3回に分けて実習があるのですが、実習をしていると、毎回必ず起こる出来事というのが決まってきます。
今回は、私が経験した、そんな「実習あるある」について書きたいと思います。
あ、この記事は題名からもわかる通り、公益性があるとか何か後世のために役立つとか、そういう内容では全くないです(笑)
なんとなく自分が面白いと思ったことを書いています、ご了承を。
学校によって実習服が違う
練習船に集まる人たちは、みんな元の学校が違います。
もっと詳しく言うと、全国に5つある商船学科の学生たちが実習のときだけ一つの船に集まるのです。学校によって、雰囲気ももちろんそうなんですけど、作業服が違うので、作業服を見ただけでどの学校なのかわかります。
知りたい人がいるのかわかりませんが一応全部明記しときます(笑)
富山は、航海コースは黄色に近いベージュ、機関コースは灰色です。航海コースは、ポケットはたくさんあるんですがちょっとのっぺりしていて、機関コースの方が作業服らしいデザインです。
ただ、最近、入学からコース分けしていたのが2年生からになったので、全員がキャラメル色のような茶色に統一されました。だから、私たちより下の代はみんな茶色のはずです。
鳥羽は、藍色と白です。藍色は普通の作業服ですが、白はペラっとしていてちょっと何て言ったらいいのかわからないデザインです。胸の前でひもをちょうちょ結びにする形になっており、あまり作業着って感じはしないですね。
広島は、同じく藍色の作業服です。鳥羽との見分け方は、鳥羽の作業服は裏地をめくると青になっていて、広島は全部濃い藍色であることです。広島の作業服が五商船の中で色もデザインも一番作業服らしいと思っています。
弓削は、鳥羽と同じで青と白の二種類あります。青は、暗い青っていうよりは、原色に近い色なのでなかなか華美な作業服です。すごくはっきりしたカラーですね。白は、鳥羽と同じで平面的なデザインですね。
私はこの白い作業服が見る分には天使みたいでけっこう好きなんですが、実用性となると汚れも目立つしポケットも少ないしどういう意図でデザインしたんだろうと思っています…。
最後に大島は、色は富山の航海コースに似ていますが、シルエットがより作業服に近い体にフィットするデザインになっています。色は、富山の、ベージュの黄色よりみたいなのを濃くした、黄土色をしています。派手すぎず、便利で作業服にふさわしいデザインです。
まあ、私の文章力がこんななので、機会があればぜひ自分で見た方が早いでしょう(笑)
とりあえず、こういう風にどこも作業服の色が違うので、集まるととてもみんな入り混じっています。カラフル…と言うと素敵に聞こえますが何しろ作業服なので、そこまでは(笑)
せいぜい弓削が真っ青できれいかな、くらいでしょうか…。
みんな、同級生の作業服に見慣れているので誰かが別の学校のを着ていたらすぐにわかりますし、大変違和感があります。たまに遊びで作業服を交換したりする人がいて、私たちは一発でわかりますが教官は全く気づきません。
そういう意味で、私たちは無意識のうちに作業服の色分けにも慣れていますし、その人の着ている色が当たり前になっているのです。
いろんな方言がある
高専の商船学科は、日本全国5箇所にあります。
さらに、その学生の中でも、県外から来ている人がいるので、実習では全国各地の出身者が集まるんです。だから、実習中はいろんな地方の方言が混ざり合うんです。
富山高専の人は富山弁、鳥羽の人は関西や名古屋弁、広島は広島弁…といった感じです。
例えば、瀬戸内の商船学科の人は「じゃけえ」というような方言が特徴的ですね。
みんな、方言の違いを面白がって、各高専で比べてみたり、「方言が移った」「その方言、どういう意味?」などと共有し合っています。
どの高専もえてして田舎にあるものですから、方言の人の方が圧倒的に多いですね。各地の方言が飛び交っています。
もちろん、標準語の人もいますよ。
2を「ふた」と言わされる
練習船では、いろいろなものの言い方が決まっています。定形的な言葉遣いをすることで、聞き間違いを少なくするのですね。
例えば、将来海外の人と同じ船に乗る可能性もあるので、ワードが決まっていれば英語が母国語でない人でも言い方、聞き方が一定でコミュニケーションのずれが少なくなります。
そういう言い方の一つに、2を「ふた」と言うというものがあります。
22は「ふたじゅうふた」、2分は「ふたふん」です。
なぜかこれは大変厳しく言われていて、普通の言い方をしないんですよね。
以前は私たちが言わなすぎて、「に」と言ったら回数に応じて当直の時間を延ばすと言われました(笑)
最初に練習船に乗った人にとっては有名な関門になっています。
1は「ひと」と必ず言うわけではないのに不思議ですねー。
でも、もしかしたら実際に商船ではそう言うのが普通なのかもしれないですし、そこはまだわからないですが。
教官にあだ名・モノマネ
これは、私が海技教育機構に絶対就職したくないと思っている理由の一つなのですが…(笑)
実習では、航海士や機関士の士官が教官として乗っています。いわば、先生と船乗りの両刀ですね。
実習生にとっては、同じ狭い船の中で何ヶ月か過ごす数少ない大人ということになります。
教官が自分たちの狭い世界で大きな比重を占めているのです。教官によって学生の実習へのモチベーションが変わったり、人気の船乗りの士官がいたりします。
そんな中で、海技教育機構の教官はみんな、あだ名をつけられる・実習生に噂される・モノマネをされる・ランキングをつけられる、のどれかは120パーセントされます。
例えば「あの教官の顔は〇〇に似てる」とか「しゃべり方がこうだ」とか「士官同士の力関係がどうだ」とか。けっこう裏で見透かしています。
そういうことがわかっているから私は海技教育機構の教官になりたいとは思えないのですが…。
何しろ学生も大勢集まっているし暇つぶししたいしで、それくらいしか話題もないのです。
しかも、なかなか的確に教官のことを観察して分析しているんですからすごいですよねー!どれだけ表面では言うことを聞いていても裏では予想もしないことが言われているかもしれません。
そして、海技教育機構には、えてしてキャラの濃い教官が多いです。まあ、船乗りだけでも教育者だけでもないという立場の仕事なので当たり前のことなのですが。
そんな訳で、教官たちは学生たちの格好の噂話の的であり、特徴が大きいほど面白い話題になっているのです。
カップ麺たまる
乗船実習では、航海中に夜食というものが支給されます。
これは夜航海があるときだけで、停泊中や錨泊中など船が動いていないときには支給されません。
この夜食なのですが、パンやおにぎりが出たり、カップ麺が出たりします。
私が覚えている限りだと、わかめおにぎり、焼きそば、ビーフン、クリームパン、アンパン、モッチッチ、カレーパン、カップ麺などが出ました。
まあ、そんな感じでちょっとした軽食が出されるんです。
おにぎりとかはすぐに食べないとなのですが、大抵のものは保存がききます。パンも、パネトーネの賞味期限が長いものが出されます。
ところで、深夜の当直で疲れていたりすると、この夜食がすぐに食べられないことがあります。深夜に起きていてすぐに寝たいときなどですね。
そうすると、その日に出た夜食が食べられなくて残るわけです。
カップ麺は保存がきくので残しておけます。ところが航海中は必ず夜食が出るので遠洋航海とかだと毎日もらえます。
そういうことが何度か連続すると、どんどんカップ麺が自分のところにストックされていくわけです。
下船まで残しておいても荷物になるので、停泊している夜、お腹が空いたときなどにたまっているのを消費していきます。
個人的にはちょっと小腹が空いたときに夜食が出ることや、保存がきくものだったときは嬉しいですね。
ただ、これは私や周りの女子の話なので、もしかしたら男子は逆に足りなかったりするのか、そこはわかりません。
下船が楽しみ
練習船を外から見ている一般の方は、練習船にどのようなイメージをお持ちでしょうか?
世界をまたにかけている、みんな若くて希望に満ちあふれている、帆船であれば優美で魅力的、そんな感じででしょうか?
まあ、そういう側面のあるところも否定はしませんが、私たち中にいる実習生はそんなこと考えもしていません。
ほとんどの実習生の一番の楽しみ、それはズバリ!下船なのです!元も子もないですね〜…。
練習船の実習は、まあ、普通の高校生の年代の人には耐えられないであろうレベルで大変なのです。
ほとんど自分のスペースのない集団生活、船酔い、逃げられない船内、電波もつながらない、何もかもつらいです。
特に、ほとんど船に乗ったことのない若い学生ならなおのこと。船乗りになりたいとか免許を取りたいとかそういう気持ちがなければ、まず実習なんて乗り越えられません。
見ている人はきれいだなあ〜とかそんな感じかもしれませんが、中では疲れとかストレスとかそんなのばっかりです。乗ってる側からすれば、自分たちが憧れだなんて何言ってんだという感じです(笑)
その中でも特に、気持ち的に好きな場所へ行けないというつらさは大きいです。だから、下船はみんなの楽しみであり、よく任意の実習生の中で上陸までのカウントがされています。
船に乗っている実習生であれば実習できることに心から喜び、船にかじりついて勉強をしているはず。残念ながらそれらは全て幻想です。
すみません、ぶち壊しちゃって(笑)
私の知っている限り、下船を楽しみにしていない実習生なんて皆無ですね。次に降りられることと、たまに出る食後のデザートを心からの励みに毎日生活しています。
ただ、書いておくと、船が好きなのと上陸が楽しみじゃないのは違います。
降りられない閉鎖された空間での生活は、それだけでストレスになります。
だから、別に船に乗ることは好きな人でも、買い出しに行けたり初めての土地を観光できたりするという意味だけでも下船はみんな楽しみにしているんです。
実習や生活環境はともかく、航海すること自体は好きですよ私も。
女子は付き合う
船内では、やはりまだまだ男性社会なので、女子実習生は少ないです。
だいたい練習船に乗っている女子は二割程度です。女子の数が男子に比べてかなり少ないので、恋人のできる人が多いです。
しかも、練習船という環境の中では、陸上とかなり感覚が違ってきます。
何ヶ月もの間、生活まで共にすることで、学生同士の距離が狭まります。
特殊な環境の中でストレスがたまり、安心感を見出したくなります。
全国にある高専から実習生が集まってきて出会いがあります。
閉ざされた船内の中では外の世界に触れることができません。
つまり、元も子もない言い方をすると、船内の生活とそこにいる人が自分の世界の全てのようになって、付き合おうと思うようになるのです。それにより、カップルが生まれやすいです。
もちろん、船内の環境に影響されるだけでなく、単純に素敵な人に出会えたからという人もいます。
カップルができるのは、主に最初の2回、一ヶ月と五ヶ月の実習のときです。最後の半年実習になると、もうみんな見知ったメンバーなのであまり新しい出会いもないのです。
私の一個上の先輩の代は、もう彼氏がいる人を除いて女子の交際率は100パーセントだったそうです。私たちの代もまあそんな感じでした。
それくらい、いろんな学校が集まる実習という場は出会いの多いものなのです。
ただ、誤解のないように言っておくと、別に女子だから付き合って当たり前ということはありません。
あくまで、カップルができやすい環境の中、女子の人数が少ないので結果として女子で恋人ができる人の割合が多いというだけの話です。
だから、自分に当てはまらないからどうということでは全然ありません。実習は確かに少数派である女子にとっては出会いの多い場ですが、どこで素敵な人が見つかるかなんて人それぞれじゃないですか。
そもそも、陸上に恋人がいる人だっていますし、実習に出会いがあるかどうかはその人によると思います。
電波に群がる
なんとなく想像はできると思いますが、船に乗ると電波は通じないことも多いです。海の真ん中なので当然ですよね。ちょっと陸から離れたり、航海中だったりすると、もう電波の圏外になってしまいます。
私たちの世代、今の若い子たちというのは、ネット環境がないとやっていけません。
船の上なのでどうしても実習の時間の多くは電波がつながらないところで過ごすことになります。だから、みんな少しでも電波のあるところに来ると興奮して必死でつなげようとします。
錨泊しているときは、海の上なので、陸が見えても電波がつながるとは限りません。
そういうときは、みんな甲板に出て電波を取ろうとしたり、スカッツル(船窓)にたむろして電波を得ています。
そういう訳で、たびたびスカッツルの場所の取り合いになります。右舷と左舷で電波が入りやすい方に人が集まったりもします。
港から出た後に錨泊したときは電波はつながりにくくなりますし、逆に航海した後に錨泊したときはそれまでよりつながるようになります。どちらにしろ、錨泊中はつながったりつながらなかったりで、電波への期待ともどかしさが混じっています。
航行しているときはほとんど電波はつながらず、みんなそこは割り切っていますが、たまに電波の入ることもあります。陸が近くなったり、島に近づいたときですね。
そんなときもみんな興奮して電波をつないでいます。遠洋航海だと、もう二週間くらい電波のないことも普通にありますね。
そんな訳で、普通は実習中はあまり電波は期待できず、みんなそれをわかっているのですが、ちょっと入るということになると多くの人が頑張って電波を集めようとするのです。
船酔いする
私が船の学科に行っていると言うと、よく聞かれるのが「船酔いしないの?」ということです。船にあまり関わりのない人は、船といえば船酔いを真っ先にイメージするからでしょう。
確かに、私たちは船乗りを目指す学生たちの学科ですし、おそらく一般の、船がちょっと動いただけで酔うというような人よりは強いでしょう。
しかし、全く船酔いしないということはありません。もっとはっきり言うと、船酔いをしない実習生なんてほんの数人です。程度の大小はあれど、船酔いする人の方が圧倒的に多いのです。
航海に出ると、船が揺れることが多くあります。
特に日本丸はマストがあるので変な揺れ方をするし、そもそも練習船は揺れないほど大きくはありません。
客船と違って揺れ防止の装置もついていません。(青雲丸ではスタビライザという安定させるものがついていましたが私のときは電気系統の問題により使用できませんでした笑)
遠洋航海や荒天の航海に出れば、大きくうねって船首が波に叩きつけられ、自分の立っている船橋に波がかかってくるなんてこともありました。そんなことになれば、もうみんな船酔いしてきます。
課業時間中もフラフラしながら気分の悪い中行っています。食事も喉を通らずに多くの人が残してしまいます。トイレに吐きに急ぐ人も多くいます。間に合わない人もいますが。
そんな中でも教官は「船酔いは病気じゃない」とか言って当直に呼びにきます。当直中はトイレには行かせてもらえず、船橋の後ろに吐くためのスペースがあります。で、終わったらすぐに船橋に呼び戻されます。
最初の一ヶ月実習で、みんな気分が悪くて廊下にしゃがみこんでるなんて地獄絵図も経験してます。
そういう訳で、練習船の上では、みんな船酔いしてあちこちで倒れてるなんて光景が見られることがあります。船乗りの卵だから船酔いしないなんてイメージをされている方は、そんなことは全くないのです。
なかなか横浜にある旧日本丸とかを見たときに、外からは想像しづらいでしょうが。
しかし、逆に言えば、みんな船酔いをしているので自分だけではありません。弱い人も当然いますし、船酔いが心配な人は仲間がいるので安心していいです。
ここまで、実習あるあるについて書いてきましたがどうだったでしょうか。
練習船に乗ったことのある人なら、思い当たることの一つや二つ、あったのではないでしょうか。
乗ったことのない人は、思っていたこととの違いはあったでしょうか。
まあ、これが、現在の私たち実習生の現状ですね。
あと、冒頭にも書きましたが、これは完全に私の思いついたことを書いているだけなので、あるあるがこれしかないということではないです。ほかにも探せばたくさんあると思いますので、自分はこんなの知ってるよーというのがあれば教えてくださいね。