船の食糧・燃料・必要なものはどうやって手に入れているの?
私たちが乗っている、船というものを動かすためには、様々な補給が必要です。
船体、設備等は基本的にもともとあるものを使えるものの、水だったり、燃料だったり、乗組員の食糧といったものは、使えば消費されますし、その都度補給が必要なのです。
特に、私のように外国に行く船に乗る場合は、数日分なんかではすみませんし、もちろん日本だけでなく世界各国、行く先々で補給していくことが必要です。
では、どのようにしてその補給というのは行われているのでしょうか?
陸であればスーパーに買い物に行ったり、ネットで注文して家に届けてもらったりできるのでしょうが、当然、船の上でそんな風に気軽に買い物に行くことは無理です。そこで、どのように必要物資を調達するか、イメージできるでしょうか?
着岸したときに誰かがひとっ走り市場まで買いに行く?
太平洋の上までヘリコプターで届けてもらう?
いえいえ、そうではありません。数十人用、何ヶ月分もの食糧を乗組員が買い出しに行くのは現実的ではありませんし、よほどの緊急事態でなければ航海中に備蓄がなくなって海の上まで届けてもらうなんてできません。持ってくる方もすごく大変ですし。
正解は、入港した時に船まで届けてもらう、です!補給というのは基本的にそうやっています。ただ、物により配達のされ方が違いますので、一つずつ見て行きます。
燃料
船を走らせるのに使う、重油などの燃料です。
これはもちろん、走った分だけ消費しますので、燃料切れを起こさないように常に予備を持っておく必要があります。燃料だけに限らず全てに言えることですが、次の航海の長さを見越し、余裕を見て補給します。
補油は、通常は船から行われます。つまり、燃料油の補給を商売にしている方たちがいて、その船が自分の船に横付けしてホースをつなぎ、燃料を送ってくれるのです。
錨泊しているときはもちろん、岸壁にいる時でも海側からやってきて、補油します。もしかしたら陸からトラック等で燃料油を補給することもあるのかもしれませんが、私は見たことないです。多分、船の方が一度に多量に運べるからではないでしょうか。とにかく、船から船へと燃料を補給しています。
補油には主として機関士が関わりますが、海の上に油を流出させないかに気を使います。
食糧
私たち船員が生きていくために当然欠かせないのが、食糧です。
食糧をゲットする前にまず、コックさんが、何ヶ月分だとこれくらいかな、と見積もって、メールで港に注文しておきます。
今はメールで予約できるから便利ですねー!ないときはどうやってたんでしょうか?港に入ってからすぐ注文、すぐ受け取り?伝書鳩?笑
とにかく、そうやって予め必要な食糧を申し込んでおくのです。船に食糧を届けることを専門にしている会社さんというのも港ごとにいて、まとめて船に届けてくれます。
海外とか、港によっては、その土地ならではの食材を手に入れることができますよ。有名なものだと、熱帯地方の果物がおいしかったりします。
アイスやお菓子類も注文されて、時々みんなで食べます。
そうやって、港に着いたときにスムーズに積み込めるようにしておいてます。食糧の場合は、陸からトラックで来る場合と、海からボートで来る場合と両方あります。会社さんが注文したものを持ってきてくれます。
ただし、大量なので冷蔵庫とか食糧倉庫は業務用くらい大きくて、多分、ちょっとした一人暮らしの部屋くらいはあるんじゃないでしょうか。(例えがわかりづらくてすみません…笑)
そうやって船においしい食糧が届くのですね。毎日の食事、ありがたいことです。
なんとなくイメージできるかもしれませんが、野菜や果物は冷凍できないので早くなくなり、航海の最後の方では野菜がとても少なくなります。お肉や魚は冷凍して日持ちします。
私物
上のように食糧は会社のお金で運ばれて十分に食べられる、とはいえ、それでは船で買った物しか食べられないことになります。
料理は出されるけどお菓子とかお酒とか珍しい物とか、自分の個人的に欲しい物はゲットできないのでしょうか?
いえいえ、そんなことはありません。
船では、個人的に、自分の欲しい物を買えるという仕組みもあります。これは、コックさんが食糧を注文するのと同じ時に、個人でも自分の欲しい物を注文しておくのです。
物としては、お菓子や自分の欲しい酒、あとはシャンプー歯磨きといった消耗品類、が多いです。珍しい物では、ゲームや衣類、香水、その他好きな物も在庫があれば注文できます。
ただ、港によっては在庫がなかったり会社さんが扱っていなかったりして注文できないこともあるので、その時は見積もりに「ありません」と来ます。諦めます(笑)
逆にダメもとで注文してみて「いやこれ扱ってるのか!」ってこともあります。
私物も、港で食糧と同様に受け取れます。みんな自分の注文したものが来てワクワクします!
それは、何ヶ月も閉鎖的な船の中で、たまに買い物みたいなことができて嬉しいですよね!お金は後で給料から天引きされます。
水
船でも陸でも生活に欠かせないもの、それが水です。特に船では周り中もう海水しかないので、真水はどうしても補給する必要があります。
実は船には製水といって、機械で海水から真水を作るシステムがあります。熱を使って真水を取り出すんですね。それにより、少しは船内で使う水を賄うことができます。
だったら、水なんて海水から取り放題で、わざわざ陸から補給する必要はないんじゃないか、と思うかもしれません。
しかし、これには大きく2つ問題点がありまして、1つは作れる量に限りがあるということです。
ドカドカ作れるならいいのですが、使う量と作る量が同じ、もしくは作る量が少なかった場合、水不足になりかねません。実際、機械で作るわけなので、あまり多くは作れないんです。そういうわけで、陸から買った水と作った水、併用してます。
もう1つの問題点は、機械では飲料水は作れないということです。
水には飲むものと洗いものや水やりに使うもの、分かれているのはみなさんもご存知だと思いますが、飲み水に関しては当然、普通の水よりも管理が厳しくなります。
日本では恵まれていることに、蛇口をひねったら飲み水も洗い水も変わらないのであまり実感はないかもしれませんが、普通はシャワーや洗面所の水と飲み水は分けなくてはいけません。
もし、作った水を飲む場合、製水の機械やら、それを運ぶパイプやら、貯めておくタンク、全て飲料水用に洗浄しなくてはなりませんし、海水からの水なので海の中の微生物とかを飲めるレベルまで殺菌しなくてはならず、かなり手間です。そういう訳で、港に着くと水を買うこともあるのです。
水を補給するのはもう、トン単位です。100トンとかになることもあります。
積み方は、トラックや船で運ばれるよりは、陸の水道から直接もらうことが多いです。
水道といってももちろん普通の蛇口なんかではなくて、補給用に特別に作られたでかい補給口からなのですが、岸壁に設置されているそこから必要な量だけいただきます。水はかなり衛生面には注意して、ホースもきれいなものを使います。タンクも洗っておくこともあります。
水は、飲むのを始めとして、生活には絶対に必要ですからね。
いかがでしたか?
ここまで書いてきたように、船での補給は、基本的には陸に着いたときにその港で買っています。生活をする以上は水、食べ物、娯楽、など必要なものはどうしてもあると思いますが、船であってもそれは変わりません。人が生活しているのですから、陸のように買いには行けないにしろ、補給する手段は必要です。こうやって必要なものを手に入れていたのです。
ちなみにこのほかにも、壊れた機械の部品だったり、船員が普段使うような調理器具、家具、暖房だったりも仕入れるのですが、それらの積み込みの手順は食糧などと大体同じなのと、長くなりそうなので省きました(笑)