乗船期間ウンヶ月の外航船員が、下船したらやりたいこと
記事更新を待ってくださっていた方、お久しぶりです!
皆さんご存知かもしれませんが、私は船という環境で仕事をしているので、記事を書くのがとても不定期です、ご了承ください。
私が下船してから早、数日が経ちました。久しぶりの記事更新ということで、会社の船についてや仕事のことなど共有したいのはやまやまなのですが、以前どこかで書いたかもしれませんが、例えば「この船に乗ってここに行ってこんなことをしました〜これ写真ですパシャパシャ!」なんてことを書くと会社に迷惑がかかってしまう可能性があります。そういうことで残念ながら乗船についての詳細な記事を書くことは容易には叶いません。
いずれ、もっと時間が経ってからできる範囲で書ければいいかなと思います。こういう時代、こんなネットの情報っていうのはとても気をつけなければいけないですからね…。
という訳で今回の記事は題名の通り、私が下船したらやりたいと思っていることです。
もちろんこれはあくまで私の考えですが、もしかしたらほかの外航船員の方に共感してもらえるところもあるかもしれませんし、また全く違う部分もあるかもしれませんね。
外航船員の環境とは
まず、「陸に上がったらやりたいこと」なんていうのはどういう概念なのか。私たち外航船員の乗船期間は数カ月単位、普通に半年とかから8、9ヶ月船に乗りっぱなしという状況なのです。
その間、もちろん、港にいる間は別として、閉鎖された船内で、周りを見ても海だけ。
陸にいればちょっと何かなくなればコンビニで買い物ができるところも、例えばシャンプーや綿棒なんていう消耗品からお菓子のような嗜好品まで、すぐには手に入らないものなのです。長くて数カ月は手に入りません(笑)なくなったらそれで終わり、欲しくても想像するしかないと(笑)
船には内航船やフェリーといった、日本国内を航行する船もあるのですが、まだ内航船であれば少なくとも月に数回は港に着き、また乗船期間も私のクラスメイトが就職したようなところでは3ヶ月くらいと聞いているので、そこまで身動きとれないという状況ではないかと思います(まあ、港に着いたからと言って好きに買い物できるかどうかというのは別として)
しかし、外航船の場合は、もう数カ月単位で上陸できません。
忙しくなければ上陸できる場合もあるらしいのですが、現在はコロナにより、船員の上陸は全面的に不可能で、自分の契約期間である半年なら半年、8ヶ月なら8ヶ月、船内でのみ過ごす、ということになります。
あともう一点、外航船と内航船の違いで、外航船の場合は停泊している港自体が「外国」という扱いになります。日本に停泊していてもその岸壁自体が外国扱いなので、然るべき手続きを踏まないと出入りできないんです。
だから上陸するときはちょっと買い物に行くのでも、パスポートを持って行くんです。
そういう訳で、簡単に上陸、と言ってもタラップを降りてひとっ走りそこのスーパーへ…なんていうことではないのです。
まあこういう事情により、下船したらやりたいこと、なんていう記事を書くに至ったこと、少しは想像していただけたでしょうか?
あ、ちなみに、数カ月も船から一歩も出られずまるで苦行のような書き方になったかもしれませんが、私自身は別にこういう環境は嫌いではありません。周囲の人やおいしい食事、その他もろもろに恵まれていれば今から外航船員を目指そうという方、ここだけ見て志望をやめた方がいいと判断をされる必要はないと、付け加えておきます。
実際、数カ月分の全く使わなかったお給料を下船して一気に使えるという側面もありますし、そういったところも含めて紹介していきます。
買い物
私が下船したら真っ先にやりたいこと、それは、買い物です!
何を買うのかというと、そんな大したものではありません(笑)
正直、数カ月にも及ぶ乗船だと、身の周りの物も古くなってきたり、消耗品もなくなってきたりします。要は、日用品です!
船乗りは休暇も長く、お金もたまって悠々自適に過ごす、みたいな面もありますが、もう下船直後は船から持ってきたわずかな荷物と使い古した持ち物に、ボロ雑巾みたいな服を着て(言い過ぎか)買い物に行き、当面の身の周りの物や、消耗品などを買いに行くのです。
船から降りる時にはなるべく荷物を減らすためにも、古い物などは捨てて行きます。そのため、手持ちの品は最小限になり、当面の生活に必要な物の買い出しに行くことになります。
私は靴下とか、毎日着る物が、何ヶ月も船に乗っていると古くなってきたりするので買いたいです。
歯医者
船に乗る前には歯の治療はすませておかなくてはいけない、というのは聞いたことがないでしょうか。
私も練習船に乗船するとき、歯科治療をちゃんとしておくように毎回言われていました。
ご想像に難くないように船の上なんかでは、病気やケガをしてもすぐに助けを呼ぶことができません。特に、歯は治せる人がいないのです。そりゃあ、骨折や重症とかもすぐにはどうにもなりませんが、軽症であれば基本的な薬は積んでいるので一般的な発熱や腰痛などの病気は船内で何とかできるのです。
ところが、歯となると知識のない素人が薬でどうにもできないものなので、乗船前にあらかじめ歯医者に行っておかなければならないのです。
乗船期間は数カ月なので、必然的に降りる頃には次に歯医者を受診する時期になっています。だから、歯医者でちょっと定期検診、をしてもらいたいです。これを逃すとまた次の乗船になってさらに一年以上空いちゃいますし…。
あとは、検診以外にも、私くらいの年齢だと親知らずも生えてくる頃ですのでその処理や、歯科矯正をしたい方はそれもいいかもしれませんね。
あ、もちろん、船乗り関係なく、皆さんも歯医者さん、及び体の検査の方も定期的に受けましょうね。
昔のドラマ、映画鑑賞
船に乗ると当然テレビ番組なんて観られません。
仕事もありますし、日本のテレビの電波だって入りませんから。
だから、テレビドラマとかが好きな人は帰ってからDVDなどを借りて観るか、録画しておいてもらうかですね。
映画も同様、船に乗っている間に、観たい映画の公開期間が終わっているかもしれません。そうなると、DVDを借りて観るしかないですよね。
どうしても映画館で観たかった!っていっても終わっちゃってたら我慢するしかありません。今演っているものの中で興味があるものを観にいくことだけですね。
でも逆に、映画だっていつでも観られる訳ではなく、限られた休暇中だからこそ、映画館でそれまで興味のなかったジャンルなどいろいろ観るチャンスかもしれませんね。
あるいは、最近の観そびれたものでなくても、過去の映画やドラマをこの機会に借りてきてまとめて観たりしても面白いかもしれませんね。特に、最近はステイホームでインドアなものが流行っているご時世ですので…。
ちなみに私が今観たい、もう終わってしまったドラマは、綾瀬はるかさんの「天国と地獄」と岡田結実ちゃんの「江戸モアゼル」です(笑)
みなさん、ご存知ですか?
新しい趣味
船乗りの休暇の特殊なところで、期間が数カ月と長いのです。
だから、普通に計画を立てるのなら足踏みしてしまうようなことでも、トライしやすい環境なのではないかと思います。
せっかく時間もあり、自分で言うのも何ですがまだ若いんですから、新しいことを始めたり、趣味を見つけてみてもいいのではないかと思います。
私の乗った練習船の教官は、休暇でスキューバダイビングを始めたと言っていました。
アクティブですよね!そういう、手軽にはできないけどこの機会だから挑戦できるようなこと、面白そうですよね〜!
ちなみに、私はあれがやりたいです!パラグライダー(笑)!!
空を飛ぶ、あれです。
昔、故郷の空を飛び回ってて憧れた覚えがあります。あれって、素人ができるものなんですかね?私のかつてのバイト先の先輩は何回かやったことがあるって言ってましたし、楽しそうです。
でも、それじゃなくても何かスポーツとか、休暇中に打ち込めるものを見つけられるといいですよね。
祖母と旅行
誰もがそうであるように、私にも祖母がいます。私は特に子どもの頃からよくしてもらったので、自分も何かしたいと思い、旅行に連れて行きたいと計画しているんです。
ありがたいことにまだ元気ですので、一緒に行けたらいいなと思っています。私の休暇中のどこかでちょっと羽を休めてゆっくり旅行できたらいいんですけどね。
今行きたいのは群馬県です!温泉がいいですよね。宝川温泉に行きたいですー!テルマエ・ロマエに出てきた露天風呂がたくさんあるところ!
ちょっと泊まりたいところの当てがあるので、元気なうちに連れて行ってあげたいのですが…。
でも今はコロナで旅行なんてなかなかできないので、これは実行できません、残念です。またの機会ということになりますね。
身の周りの整理
なんか、亡くなる前にやることみたいになっちゃいましたが…違います(笑)
船に長いこと乗っていて降りると、一例ですが、行政からの手紙や、保険の手続き、請求書等の事務的なこと、が溜まっていたりするのではないでしょうか。そういったものも休暇となれば一挙に処理することになります。数カ月分のものなので、想像しただけで疲れそうですよね。
もちろん、整理といってもそんな堅苦しいばかりのことを言っているのではありません。
ほかには、知り合いに挨拶して下船の報告をしたり、家族サービスをしたり逆に身の周りの方の近況を聞いたりと、一旦家で落ち着くことも気持ちの整理につながるのではないでしょうか。自分だけでなく、家族も、お互いに。
そして、今後のキャリアプランなどを立てる時間になれば、仕事と休暇のメリハリがつけられると思います。
それから、携帯電話の買い替えや家のリフォーム、私であれば記事更新?など、陸にいるうちにしておきたいことをこなすのも必要ですね。ずっと陸にいられるわけではないのでやることがあればボヤボヤしていられません。
この機会を逃すとまた一年ごしとかになってしまうかもしれません。
そう考えると何気に忙しいですよね。もちろんここに書いたのが全てではないので、何を休暇中に特にやらなければいけないかはその人によると思います。
ちょっと高い買い物
最初に書いたと思いますが、私たち外航船員というのは、乗船期間も長く、休暇も長いという特徴があります。
乗船期間が長いということは、その間にずっとお給料を貯金し続けられるということ。船乗りのお給料というのはもともとが平均よりも高いので、下船したらかなりの貯金ができているのです(ただ、もちろんこれは独身や自分でお金を使える方の場合で、仕送りなどされている方は異なるはず)
そういうわけで、私もそうですが、休暇になった外航船員は何かちょっと高い買い物をしたいという方が多いようです。
車、バイク、時計、カバンなどがテッパンでしょうか。あとはまあ、ある程度落ち着いたら家とかですかね。
もう、ちょっと高いなんてレベルではなくなってますが(笑)
卒業生はすぐに外車を買って乗り回してるーなんてことを学校の教官は言ってました。
お金も時間もあるので、ウン十万円とかもポンッと払えるということなんですかね?けっこう私の知り合いの船乗りので大きい買い物をした話などもよく聞きます。
とはいえ、私自身は現在そこまで高額な欲しい物はないのです。時計なんて時間がわかればいいですし、贅沢に慣れてもいないですし、一口何十万もする買い物自体、思いつきません。
私は女性なので、アクセサリーとかダイヤモンドとかっていう選択肢もありますが、あいにくとそこまで貴金属にも興味がなく…(大体私なんかが高級品を持っても着こなせない(笑)
お金がかかることといえば、私は海外旅行に行きたかったのですが、もちろん今はコロナでそんなこともできなくなってしまいました。いつか行けるかなと思っています。
まあ、何にしろ、お金はよく考えて、節約することも必要だと思います。
時間は有限
ここまで、下船したらやりたいことについて書いてきましたが、もちろんこれはあくまで私の立場から書いたことです。全ての外航船員が(通ずるところはあるかもしれませんが)同じとは限りませんし、あるいは、ここに書いた以外でもいろんな遊びや作業などがあるはずです。
ただ、この記事を書いていて思ったことがあります。それは、船乗りの時間は有限だということ。
船の上は、陸上に比べてかなりできることに制限があります。
例えば、8ヶ月乗って4ヶ月休暇という船員さんですと、4ヶ月先までの予定しか立てることができないのです。半年後の予定なんて入れられないのです。
つまり限られた休暇中にやりたいこととかパッパとやらなくてはいけないのです。
コンビニに行くのも、好きなアーティストのコンサートに行くのも、旅行もドライブもオンラインゲームも船に乗ってしまうと次まで数カ月待ちです。
大きなことだと、結婚するのも家とか買うのも決断してすぐ決行!という必要があります。
そういう意味で、陸にいる時間を大事にしなくてはいけませんね。私はそれをとても実感しました。
加えて思ったのが家族との時間です。
親や兄弟、子供やペットといった家族と会えるのは下船している期間だけなのです。今まで何気なく家族と過ごしてきましたが、限られた時間しか会えないとなれば、それをもっと大事にしないといけないと思いました。
特に、もし高齢の家族がいる場合、残念ながら、一年近く乗船した後にまた会えるという保証はないのです。
その覚悟を、乗船のたびに覚えないとならず、そのときはもう二度と会えない可能性も視野に入れて別れないといけないのです。とても辛いことです。
ですが、その時に後悔しない為にも、休暇の時間は家族を思いやって過ごさないといけないのです。
陸にいるうちは気づかなかったことですが、船に乗っていると日常の大切さ?のようなものを強く感じました。
何だかしんみりとしてしまいましたが、とにかく、陸にいられるうちの時間を有効に過ごさないとと思いましたし、船員でない方も、こんな職業の人が世の中にいると思うと、自分の時間の中で何かに挑戦してみる気になるのではないでしょうか。