とある女性航海士の日常

新米の女性航海士です。高専や船のことなど書きます。コメントは悪意のないものは100%返信しますが乗船のため非常に遅いです笑(半年後くらいかも)

高専に来ていじめという概念がなくなった理由について現役高専生が考察しました

 

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私は高専に入ってからの5年間というもの、学校でいじめについて聞いたことがありません。

 

もちろん、高校生の年齢にもなっていじめなんて、普通の高校でもないとは思いますが、高専では全くいじめがなさそうに見えます。というか、私は高専に来ていじめという概念そのものがなくなりました。

 

なぜ高専ではいじめの概念がないのか、その理由について私なりに考察します。

 

対比として普通高校をたびたび出させてもらっていますが、この記事は、普通高校にいじめがあることを言うものではありません。また、高専にいじめがないことの証明でもなく、あくまで私の経験から感じたことを書いています。

 

私は普通高校に行った経験がないので中学校の体験なども例に出してお話しようと思います。

高専への進学を考えている中学生の方にも参考になれば嬉しいです。

 

 

 

ストレスフリー


いじめをする人も、何か日頃嫌なことがあってその憂さ晴らしに別の人をいじめているってことがあると思います。ですが、そもそも高専生はストレスをためにくい環境下にあります。それには具体的に以下のような理由があるのではないかと個人的に思っているので紹介します。

 


校風が自由


校則でがんじがらめにされ、スカートの長さや持ち物の色についてまで厳しく指導されたら心もまいってしまいますよね。自分がそんな風に圧力をかけられたらやっぱりストレスもたまりますし誰かに八つ当たりしたくもなるかもしれません。

 

私も中学生の頃、校則がとても厳しく、スカート丈や靴下の色、頭髪などについてよくチェックされ、「周りと同じ格好をしていることが大事」という風潮がありました。そして、少しでもそういった型からはみ出すとやはり周りが陰で悪く噂するような空気は残念ながら当たり前にありました。

もちろん、厳しい校則から来るストレスが直接いじめにつながるのかどうかはわかりませんが、少なくとも中学校には、高専にはない、「規則」の中に押し込められるような感覚があったのです。


それに対して高専は、大学生と同じ年代の人が普通に私服でそこらへん歩いてるし規則なんてゆるゆるです。スカートの丈とかなんて全く決まってないし、頭髪やピアスだってみんな自由にしてます。格好が違うことが理由で周りからいじめられるなんてことはありません。


また正直、勉強も厳しくないので本当に嫌な時には学校を少しサボっても大丈夫で、いつでも逃げられる環境になっています。私の周りにもけっこうサボってる人はいます(笑)面倒って理由だけでサボるのはやめた方がいいと思うんですが…。


まあ、そんな感じでみんなとても自由でストレスフリーに学校生活を送っています。

 


センター試験がない


例え勉強が大変すぎたとしても、それを理由に人をいじめるなんていう行為はありえないと思いますが、もし受験のストレスが周りに発散されているのだとしたら、高専はそういったものとは無縁です。

 

高専は3年から4年に上がるときにエスカレーター式に進級することができます。センター試験や大学受験なんていうものはありません。だから受験のストレスで押しつぶされそうになりながら必死で勉強するなんてことはないんです。

それどころか、高専の3年って中堅として一番自由な時期で、めっちゃ暇でみんな遊んでます。私はこの時期、ずっとバイトして、一人でいろんなところに旅行してた気がします。


「この大学に入らなきゃ」とか「勉強時間のために好きなことができない」といった圧迫がないので学校もすごく楽しいですし、ストレスもたまりません。

 


好きな勉強ができる


高専では、型にはまったような普通の勉強をする訳ではありません。

もちろん一般科目もありますが、自分が選んで入学した、自分の専門科目を勉強するんです。当然学ぶのは自分の好きなことだし、「将来何の役に立つの?」ともならないからすごく意欲的に勉強できるんですよね。

 

また、専門の中でも自分の好きなところをさらにピックアップして選択できるんです。

例えば、私たち商船学科では船の中でも「航海コース」と「機関コース」で選べますし、お隣の国際ビジネス学科は言語を勉強する中でも中国語、韓国語、ロシア語から選べるんです。


さらに、学科によっては自分の好きなコマを選択できるものもあります。大学みたいですね!例えば選択科目で自分の興味ある科目を選んで受けたり、あるいは好きな教官の授業を選択したり…。


自分の選んだ専門科目、その中でもさらに好きな勉強ができますし、将来絶対役に立つってわかってるので勉強のモチベーションを高く維持できるんですよね。

 


正直、私はこの高専自由な校風こそが、高専にいじめがないことに直結していると思っています。

 

 

精神年齢が高い


はっきり言って、高校生にもなれば、いじめをするような年代では普通になくなっていると思いますが、それでも高専にいじめがないと感じられるのは、学生の精神年齢が高いからだと思います。
私は高専が頭いいとは全然思いませんが、それでも精神的に成長しやすい環境だと思います。


理由は以下のようにいくつかあります。

 


様々な学年の人がいる


高専は入学したときから、20歳の5年生の先輩が普通にそこらへんにいます。入学したばかりの高1の年代の人からしたら、すごく大人に見えます。そんな、大人な人たちと寮生活や部活で当たり前に関われる…。

やっぱり、年代の幅が広いと世界も広がりますし、自然と大人な考え方が身に付きますよね。

大人な先輩たちと関わり、精神的に成長できると思います。

 


寮もあって集団生活ができる


高専には寮があります。寮生活をしたい人は寮に入ることができます。

 

寮生活では自分のことだけでなく他人のことも考えて行動しなければなりません。いくら仲のいい人でも気を遣わなければいけない時があること、苦手な人を拒否するのではなく、大人な距離を保つのが大事だということ、それを身を持って知ることができます。

 

高専の寮は自由度が高いですが、それでも集団生活の中ですのである程度の決まりはあります。(普通に守れる、最低限の決まりですので、入寮を考えている人は安心してください!)

みんなその決まりを守り、支え合ってお互いに快適になるように過ごしています。寮で、人との距離感を訓練することができるんです。

 

さらに、寮には直接指導する年の近い先輩から、5年生の先輩までいます高専ならでは、先輩にも先輩がいるんです。ですからちょっと年上の先輩にいじめられたらより年上の先輩に注意してもらえばいいんです。

 

ただ、基本的に集団生活のルールがあるのでいじめは生まれない環境ですし、どの先輩も、自分たちが寮生活で人と支え合って暮らしてきた経験があるので後輩に自分がされていないような理不尽なことを強いたりしません。

それどころか自分も集団生活で不安だったこととか覚えているので親身にサポートしてくれます。これは私が自分もそうだったのでよくわかります。

 

それでももし万が一いじめられたら寮を取り仕切っている高学年の先輩たちを頼りましょう。はっきり言って、5年生からしたら4歳年下の1年生なんて初々しくてフレッシュで、かわいくてたまりません!自分の1,2個下の子は厳しく指導しても孫の代、1年生はただただ甘やかします(笑)


もし5年生も年齢に物を言わせていじめてくるようならそんな寮は崩壊してますから入るのはやめた方がいいでしょう。私の寮は違いますしそんな高専寮はないことを願いますが。

 


自分で進路を決断した経験がある


高専には、中学校を卒業し、高校生の年齢で入学します。

だから中学生の時点で建築なり電気なり、私であれば船なり、自分の専門にする学科を決め、志望しなければなりません。

 

普通の高校に進むことと違い、この決定は決して安易ではありません。中学生というまだ若い子どもたちが「自分はこの道に進んでこれをしたい!」って決めるんです。高専生は将来は自分の学科に関係する仕事をする確率が高いので、大げさに言ってしまうと、一生を左右する決定を中学生でするということです。

 

これって、簡単じゃないですよね。何も考えずに普通科に進んだ方が楽に決まってるのに、あえて専門の学科を選ぶんですから!しかし、全ての高専生はそれを経て入学して来ます。

自分で自分の学科を選んであえて特殊な世界に飛び込み、それだけ大きな決定をしたという自信と覚悟が自分の中にあります。そういう重大決定を下した経験のある人たちですので、少しだけ精神や考え方が大人に近いのかな、と個人的には思っています。

自分は進路を決めて頑張ってるんだから、人をいじめたりしている暇はない、という雰囲気はありますね。


ま、私みたいにそんな深く考えずになんとなく高専入りました〜って人も多いんですけどね!笑

 


人と合わせる風潮がない


高専では、行動や好みを誰かに合わせる必要はありません。「人と同じでなくてはいけない」などと、誰も思っていないからです。

 

中学生の頃は、みんなと同じ枠に入れられ、先生たちにも「みんなと一緒に行動するんだぞ」というようなことを言われてきました。生徒間でも、一人だけ別の方向に行く人ははぶかれる、持ち物とか人と合わせてないと目立つという空気がありました。

 

しかし、高専の教官は学生が「これをやりたい」と言えば、学生の自主性を重んじ、好きなようにさせてくれます。「お前は持ち物と考え方が周りと違うから同じにしなきゃだめだ」なんていうことは一切言われません。人と違う考え方こそ、物を創造し、生産する力だからです。

 

高専はそういう能力を育て、学生が自分で考えて自主的に行動できるような仕組みを重視しています。

むしろ、どんどん新しいことを産み出して!っていう感じです。


これには理由があると思っていて、高専は大学生の年齢で私服の人もいるし、実習があるから作業服の人もいます。さらに、やってることも、船の勉強とか電気の勉強とか、そもそもが普通じゃないですよね。

 

だから一人だけ見た目とかやってることが変わっていても、浮かないんです。いろんな人がいますから。中学生の頃は「あの子ちょっと違う!」→仲間はずれ!となっていたことも、高専では「そういう子もいるんだ〜、面白いね」で済まされてしまいます。


あ、人と違うっていうのは、チャラチャラしたり、喫煙したりっていう違いではないですよ?そういうことには高専の教官ももちろん厳しいです。あくまで、自分ではどうしようもできない、見た目や好みの違いについてです。

 


学科が専門的


高専は、全ての学科にそれぞれ専門科目があります。みんな、自分でその専門に興味を持って入学して来ます。そして、みんなで同じ方向に向けて勉強します。

 

つまり、簡単に言ってしまうと気の合う人が多いです。普通科とかだと、性格やら趣味やら将来の夢やら、いろんな人がいますよね。もちろんそれはそれで素晴らしいことですが、高専は同じことを専門にしている人しかクラスにいないので、話も合うし、モチベーションも上がります。

 

しかも、専門と言っても、広い範囲の話ではないです。「音楽」とか「美術」といったような広い意味の専門とは違い、「機械システム」や「電子情報」といったコアな専門分野なんです。

 

こんなところに入学するんですから、そんなの自分と気の合う人、同じ目標を持つ人と会える確率がどれだけ高いかわからないですよね!

 


学生が多い


高専は学年が5年まであり、普通の高校より2年も長いです。さらに、専攻科といって、人数は少ないですが、5年間終わった後さらに2年間通う人たちもいます。

 

これだけ学生が多いと、味方がどこにでもいます。たまたま近くには気の合う人がいないとしても、どこかに必ず話せる人がいます。

それも、年が4つも5つも離れている先輩たちとも普通に話せるので、大人な対応をしてもらえますし、味方になったらこんなに心強いことはないでしょう。

 


オタクが多い


高専はイメージ通り、オタクが多いです。

 

ロボコンやコンピュータのオタク、そうじゃなかったとしても、アニメや漫画のオタクという部類の人たちが多いです。また、みんな自分の学科の専門の内容に打ち込んでいます。そういう人たちは、自分のやっていることに精一杯なので、人をいじめるなんて暇なことはしないんです。

 

他人に何かする時間があるならその時間を自分の興味のあることのために時間を使う、高専生というのはそういう人たちです。でないと、いくら普通科高校より時間的に余裕があるとはいえ、もったいないですよね。


自分が好きで選んだ専門の勉強をやっているから、人のあらさがしなんかに興味ないんです。

 


クラスがずっと一緒だから人柄とかわかってくる


高専では、5年間クラス替えというのがありません。

 

このシステムをよくとるか悪くとるかは人それぞれですが、少なくともそれだけ同じクラスメイトと一緒だと、少なからずクラスメイトのことを理解できるようになります

同じクラスメイトと5年間一緒にやっていかなくてはいけませんからね。

だから、「違うから排除する」というような空気はなく、「あの人はこういう人だもんねー」で済まされます。

 

それぞれのキャラというのがわかってくるので、お互いにそれに応じた扱いをするようになります。5年間一緒なので、誰かをいじめようなんて考えはなくなり、合わない人でも協力し合う雰囲気が生まれます。

5年間いじめ続けるのは、いじめる側も疲れてきますし、そんなことになればほかのクラスメイトも黙っていないでしょうからね。長いことずっと一緒に過ごすだけあり、みんなできるだけ平和に暮らしたいんです。

 

 

 

いかがでしたか?

 

高専はいじめが起きにくい環境だということを、わかっていただけたでしょうか?もちろんこれは完全に私の考えですので全ての高専において正しいとは言えないかもしれませんが、でもそのように考えた根拠はこのようにしっかりあります。


また、実際、私自身が高専に来ていじめのなさを身をもって感じています。だから高専への進学を考えている人は、こういう面でも安心して欲しいです。


もちろん皆さんも高専に入るのであれば、いじめは絶対してはいけません。高専に入らない人でもいけません。

 


これから高専に進学する方たちが、ぜひ、同じ専門分野で気の合う人に出会えることを願っています。

 

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